趣旨説明「 6月5日、福島県県民健康調査の第27回会合が開かれ、甲状腺がんの疑いのある子どもが疑い例も含めて190人に達するという検査結果が公表されました。また、昨年6月の健康調査では事故当時5歳だった1人ががんだと診断され、さらに経過観察とされた事故当時4歳の男児もがんと診断されました。福島県外でも、宮城県丸森町でも2人の子どもが甲状腺がん及び疑いがあると診断されました。
しかし、福島県の県民健康調査検討委員会は、被曝による甲状腺がんへの影響が考えにくいという、従来からの姿勢を崩していません。理由としてはチェルノブイリ原発事故に比べ福島県民の被曝線量が少ないとみられることや、がんが多発した5歳以下にほとんど発生していないことを挙げています。さらには、昨年9月に国際原子力機関や国連科学委員会(UNSCEAR)、世界保健機関などの国際機関や専門家などが参加した「福島国際専門家会議」のメンバーが福島県知事に対して「甲状腺がんの増加が原発事故に起因するとは考えられない」「健康調査と甲状腺検診プログラムは自主参加であるべきだ」と提言するなど、因果関係の否定に傾注していますが、初期の被ば<量が全く明らかでない中、経過観察となった子どもの状況の把握を含めて現状の検診体制で十分なのかの検証も必要です。また治療体制についても問題が指摘されています。これらの残された課題を共有し、論議を深めます。」
第27回「県民健康調査」検討委員会 第7回甲状腺検査評価部会(平成29年6月5日)の資料2-1~2-3、資料7を含む)
★会の趣旨、経緯、参加者などの詳細(事務局まとめ資料の1枚目および2枚目 画面右上の「ダウンロード」からpdf取得可能)
★木村真三氏(獨協医科大学准教授)、講演「チェルノブイリから福島の甲状腺がんを考える」資料(3枚目から17枚目まで)
★崎山比早子氏(NPO法人3・11甲状腺がん子ども基金代表理事)講演「福島における甲状腺がんの多発と3・11甲状腺がん子ども基金設立の意義」資料 (18枚目から29枚目まで)
★全体の動画 (甲状腺がんについては13分50秒より2時間14分(終了時)まで)
ICRPは2011年に「組織反応に関するICRP声明 正常な組織・臓器における放射線の早期影響と晩発影響 -放射線防護の視点から見た組織反応のしきい線量-(Publication 118)を発表しました。この中で、これまで2007年勧告の中で職業被ばくの線量限度として眼の水晶体は年間150mSvとしてきたものを「5 年間の平均が20mSv/年を超えず、いかなる1 年間においても50mSv を超えないようにすべきである」と大幅な引下げを勧告しました。これは最近の研究により白内障のしきい線量がこれまで考えられてきた値(8Gy)より大幅に小さな値(0.5Gy)であると考えられることによるものです。
このように放射線の被ばくは研究が進むほどその限度線量が引き下げられる傾向にあり、人体にとってはその影響がわかりにくいが、だんだん解明されるほど危険度が高まるという基本的にやっかいな性格をもった物理現象であるといえます。
なお欧州ではこの勧告を各国の法規に早期に取り入れようという取り組みをしていますが、日本では2017年7月から政府の放射線審議会でようやく検討がはじまったところです。
http://www.nsr.go.jp/data/000197233.pdf
このページに 2016年8月掲載の 「放射線被ばくの基準値の歴史(概要版)」という資料があります。今中氏の記事の中でICRPの基準値の歴史をまとめた部分はかなり重複しますのでその詳細をお伝えするよりはそのほかの印象をお伝えいたします。
今中氏は前半についてはこの記事を書くに至った動機として「誰がどんな根拠で20ミリシーベルト安全・安心キャンペーンをしているのか」知りたかったとしている。
その結果、一般公衆に関して年間20ミリシーベルトという被曝基準値は結局のところICRPの2007年勧告にある現存被曝状況に行き着いた。しかしICRPも「現存被曝状況なら安全・安心です」と言っているわけではなく、「放射能汚染が起きてしまったから(仕方がないので)、年20ミリシーベルト以下であれば、行政がどこかに低減目標値を設定して、人々がガマンしながら生活することもある得る」という過渡的基準値が現存被曝状況であると整理している。(P.681)
今中氏によっては明確には指摘されていないが、それまでICRPが公衆に対する年間被曝基準値として1954年勧告の15ミリシーベルトから長い時間をかけて、5ミリシーベルトを経て、年間1ミリシーベルトに落ち着いた(1977年 生涯の平均、2007年どの1年をとっても)基準値低減の歴史を一挙に棚上げして、「現存被曝状況」という事故時の区分けを作ることによって時限的とはいえ、これまでの基準よりはるかに高い被曝に公衆を曝すことを各国政府に許容したことは大幅な後退ではないだろうか。
福島第1の事故後、結局はそれが根拠となって高線量汚染地区への帰還が国の政策として推進されているように見えるが、それを実際に政策として決定したのも日本政府の判断である。2017年6月3日の崎山比早子先生の講演でも低線量地区から高線量地区へ住民を移動させるということは「ICRPの放射線防護体系のどこにも現在の被ばく線量よりも高くするような政策は見当たらない」として批判されている。
実際に帰還する現地はモニタリング数値は低いがモニタリング装置周辺は特に除染を集中的に実施しているのが実態であり、一歩除染地点を離れ、駐車場や田畑や山林にはいると1から2ミリシーベルト毎時のように高い値も広く存在している。例えば左上のグラフに楢葉町(2015年9月5日に避難解除)での実測データ例を示す。また除染が点や線としてなされている区域では時間が経つと周囲の高線量領域の影響でまた高い値になるというのが実態である。したがってそれを知っている住民は高齢者を中心にしてしか帰還していない。それは正しい自己防衛反応なのであろう。しかし経済的にも生活面でも困窮している人が多いと報道されている。避難している住民への支援を打ち切り、帰還を事実上強要している政策を変更させる必要がある。
放射線から子どもたちを守る三郷連絡会 事務局
岩波書店の発行する『科学』第87巻第7号(2017年7月号)で「被曝影響と甲状腺がん」という特集が組まれています。
福島県の県民健康調査の問題点、過剰診療・過剰検査問題、要経過観察になった人たちのデータ無視問題、20ミリシーベルトの幻の安全・安心論など、気になる記事が満載。著者名と記事の題目と該当ページの順にご紹介いたします。
・井田真人:「有意ではない」と「影響はない」の混同、そして繰り返される100ミリシーベルト問題 (p.644-650)
・白石 草:研究デザインから考える 福島県の「甲状腺検査」ー4歳児未公表データが意味するもの (p. 651-660)
・平沼百合:「過剰診断」「過剰治療」をめぐる内部の声 (p.660-663)
・崎山比早子:「3.11甲状腺がん子ども基金」から見えてきたもの (p.663-666)
・濱岡 豊:甲状腺がん過剰診断論の限界 (p.667-680)
・今中哲二:「20ミリシーベルト」と幻の安全・安心論 (p.681-689)
・津田敏秀:甲状腺がんデータの分析結果―2017年6月5日第27回福島県「県民健康調査」検討委員会発表より (p.690-695)
東電福島第一原発の事故後、甲状腺がんを発症した人たちに10万円の給付金を支給している「3・11甲状腺がん子ども基金」(崎山比早子氏が共同代表の一人)は3月31日、新たに6人に対して療養費を給付することを発表した。その中に原発事故当時4歳の子どもが含まれているとのこと。これまで5歳以下の子どもに甲状腺がんの発症例がみられないとして福島県の専門家会議は原発事故の影響であるとは考えにくいということの一つの根拠としていたことが崩れた。しかもなぜこの症例が報告されていないかを探ると「経過観察」にまわされた場合、その後甲状腺がんと判定され、手術を受けても県の統計にははいらない仕組みになっていることが判明。発症データ隠しと言われても仕方がない現実が明らかになった。そして今まで経過観察になった人は2000人以上存在する。いままで発症例が100人台と言われていたことすら大きな疑問符がついてきた。
フリーランスライター 木野龍逸氏の報告
https://news.yahoo.co.jp/byline/kinoryuichi/20170402-00069421/
「3・11甲状腺がん子ども基金」は、「独立性の高い資金によって、甲状腺がんの子ども等を支援するとともに、原発事故による健康被害状況の調査・把握を行っていきます」というスローガンのもとに活動を開始しました。
ホームページ
これまで2回の給付を発表していますが、福島県以外からも同位体治療が必要な患者が発生していることがわかります。
第2回給付詳細
福島県15人、埼玉県1人、東京都1人、神奈川県1人
http://www.311kikin.org/wp-311kikin/wp-content/uploads/2017/01/20170131-1.pdf
第1回給付詳細
福島県26人のほか、神奈川県3人、宮城県、群馬県、千葉県、埼玉県、長野県、新潟県が各1人
http://www.311kikin.org/wp-311kikin/wp-content/uploads/2017/01/20161227.pdf
以上の給付を発表した記者会見の模様が下記サイトにてまとめられています。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2093
「<増補>放射線被曝の歴史」中川保雄著(明石書店)やICRPの文書を参考に、放射線の被ばくの基準値(年間あたりこれ以上被ばくしてはいけないというような値)がどのように決められてきたのか、歴史的に整理してみました。
福島県での小児甲状腺がんの発生が通常より多いと言えるのかどうか、国内では見解が分かれていますが、下記国際学会では議論を積み重ねたうえで日本政府への要請をおこなったそうです。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2026
「国際環境疫学会(ISEE)は1月22日、日本政府に対して書簡を送り、福島県民健康調査の甲状腺検査について、「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、信頼に足るリスクの推定を行うよう要請した。」
1986年のチェルノブイリ原発事故で大きな被害を出したベラルーシ共和国。その後どのような対策が打たれたのだろうか。
まず環境放射線のモニタリングでは大気、表層水、土壌、原発周辺と4つの分類にしたがって測定がなされている。日本の場合、土壌の放射線量をほとんど測定していないこと、また核種でもセシウム137だけでなく、ストロンチウム90が重視されている。土壌の放射線量の測定結果をみると深さ方向への浸透は少なく、表層にとどまる結果、自然崩壊による減少が主な貢献をしているとみられている。
動物における汚染度は野生生物(イノシシ、ヘラジカ、ウサギなど)の場合、事故から25年近くを経過した2010年においても800から200ベクレル/kgと高い値を示している。これはキノコやベリーなど野生植物の線量が1200ベクレルから200ベクレル/kg程度の高い値を示しているので、それらを摂取している結果であると推定される。日本においても野生動物や天然のキノコ類における汚染は長期間続くと考える必要がありそうである。
農業においては当初深刻な汚染が広がり、高度汚染地帯では全面的に農耕が放棄された時期も3年間程度あったが、その後土壌の改良(深く耕す、石灰処理、カリ・リンの化学肥料の適正な利用)、牧草地の更新、移行係数の低い飼料作物の植え付け、牛乳の摂取を控えて肉牛として利用する、畜牛へフェロシアン化合物(プルシアンブルー)添加セシウム吸着剤の投与など等、各種の対策を施すことにより、農業畜産業の再構築をはかっている。
森林においては汚染度に応じて通常の利用から立ち入り禁止まで様々な対応がとられているが、森林火災(山火事)が発生すると放射性物質が大量にまき散らされるので、その防止に努力が払われている。通常 セシウム137で55万ベクレル/平方m以下、ストロンチウム90で3万7千ベクレル/平方m以下の汚染であれば樹木などの産物で基準値を超えることはないとされている。
これらチェルノブイリの経験をみると、農地や山林などの汚染の軽減には10年から25年あるいはそれ以上の時間が必要だということがわかる。ちなみに放射能汚染が自然崩壊で1000分の1になるには半減期の10倍の時間がかかる。これから考えても、全体からみるとごく一部の除染地域の空間放射線量だけの指標で帰還を促す政府の方針には疑問が多い。
最後に在日ベラルーシ共和国特命全権大使のセルゲイ・ラフマニノフ氏の福島事故対策に関しての助言を要約して紹介する。
1.表層土壌の放射線量測定による正確な汚染マップの作成が必要。
2.住民の健康管理では無料の健康診断とリハビリ制度。ベラルーシでは年間6万人の子供たちが約1か月汚染地帯から離れて生活し、体内に蓄積したセシウムを排出している。ビタミンや抗酸化物質を含んだ給食が無料で提供されている。
3.心理面でのリハビリ。現実を知り、何をしてよいか、してはいけないかを知ることによりストレスを軽減する。
以上「 チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書最新版」(産学社)2013年発行 ISBN 978-4-7825-3349-9 による情報
ペトカウ効果とは?
ICRP(国際放射線防護委員会)などは「同一の総被ばく線量は同一の健康障害を与える」という考えで処理していますが、ペトカウという科学者が「低線量率被ばく」(単位時間に浴びる線量が小さいこと、つまり低線量被ばくにつながる)は「同一被ばく線量で比較した場合 著しく被ばくの効果が高い」 という説を発表しています。これは一見「低線量被ばくでは放射線がDNAを傷つけても修復機構が働く」という常識に反しているようですが、そのメカニズムが被ばくによって発生したフリーラジカル(活性酸素)が細胞膜を破壊するというもので、細胞核(DNA)の破壊と修復という通常考えられているものとは別の機構のためです。低線量率ほどフリーラジカルが有効に作用し、高線量率ではフリーラジカルが不活性化するという説明がなされています。
もしこれが事実だとすれば、これまでのICRPの基準による一般公衆の(人工的な)被ばく限度(年間1ミリシーベルト)を大幅に低減しなくてはいけないことになり、ECRRという組織では年間0.1ミリシーベルトとすべきだとしています。
日本政府の唱える「年間20ミリシーベルトでも健康に影響はない」という基準からすると200分の1になってしまうので、このように放射線の被ばくが多い世界(自然放射能でも年間2ミリシーベルト被ばくしている)では絶望的な気分になってきますが、一方で救いもあります。
それはこの場合被ばくの影響がフリーラジカル(不対電子をもった遊離活性基。代表は活性酸素)を発生させることによる間接的な効果なので、たとえばそのフリーラジカルの作用を低減させる化学物質を摂取することによって防護できる可能性が考えられるからです。
抗酸化物質への期待
そこで最近よく耳にする「抗酸化物質」というものが登場します。これには自然界にもさまざまな種類が存在していて、例えば次のようなものがあります。( )カッコ内は多く含む食品を示します。
ビタミンC[アスコルビン酸] (かんきつ類、イチゴなど野菜、果物類)
ビタミンE[トコフェロール] (植物油)
β-カロテン(ニンジン)、リコペン(トマト)
ポリフェノール(茶、豆、チョコレート、コーヒー、赤ワインなど)
実際の効果は?
それではこれらの成分を含んだ食品を日頃多く摂取していれば低線量率被ばくの影響を免れることができるでしょうか?そう願いたいところですが、研究結果としては、「まだまだ効果がはっきりしない」といえる状況のようです。特に医薬品として多く摂取しすぎると逆効果という場合もあるようです。
(例えばビタミンE)
現状で言えることは、野菜や果物など通常「体に良い」と言われている食品を多めに摂取することで、「食物繊維やビタミンなど栄養学的に必要とされている成分を確保しながら、抗酸化物質の効果も期待する」という姿勢が良さそうです。逆にトランス脂肪酸であるとか体に悪いと言われる成分を避けることも必要です。「医食同源」中国の古い言葉は現在でも生きています。
ともかく基本は「不要な内部被ばくを避ける」であるとも言えましょう。
1.劣化ウラン弾とは
原発は核燃料であるU235の放射性同位元素としての性質(中性子の衝突による核分裂の連鎖反応)を利用して副産物として大量の熱を発生させ、それをもとに発電機をまわして電力をえています。核燃料の原料としてウラン鉱石で天然ウランは0.7%のU235を含有し、残りはほぼU238です。これを遠心分離機にかけてU235とU238のわずかの質量の違いを利用して濃縮し、U235を3%くらいの濃度に高めたものを用います。その時に残りかすとしてU235の濃度の低いもの(0.2%程度)で残りがほとんどU238という核廃物が大量に発生するわけですが、これが劣化ウラン(Depleted Uranium、DU)と呼ばれるものです。
ウランは密度が高い(19g/cm3)のでこれをうまく焼き固めて弾頭にすると通常のタングステンカーバイド(超硬合金 WC)よりはるかに貫通力の高い弾頭になります。そのうえ摩擦発熱で酸化ウランが燃え上って熱的に殺傷する能力も付加されています。この性質と、原料が厄介者の核廃物でタダ同然の素材であることに着目して1970年代頃から研究が進められ、1991年の湾岸戦争、1995年のボスニア軍事介入、1999年の旧ユーゴ空爆、2001年の対アフガニスタン戦争、2003年のイラク戦争に米軍・英軍により使用されました。
2.核物質としての性質
劣化ウラン弾のほとんどを構成するU238は長いプロセスを経て自然崩壊して鉛の放射性的に安定な元素(Pb206)になりますが、この過程でα崩壊、β崩壊を繰り返します。劣化ウラン弾は破片として人体につきささればもちろん内部被ばくを発生しますが、より広範な影響を与える仕組みは貫通したときに酸化ウランの微粒子として広く飛散し、その後も再飛散を繰り返し、住民に(主として)吸入被ばくを与え肺などにアルファ線、ベータ線の内部被ばくを与えることです。
なおU238には重金属としての化学毒性も注目せざるをえないものがあり、被ばくの効果との相乗効果で深刻な健康影響を与えているという考え方もあります。
3.兵士・住民の被害状況
劣化ウラン弾が非常に人体に有害であることを米軍・米国政府は認めていません。自軍の兵士にも何の注意も与えていないため、帰国してから帰還兵の中に深刻な被害が発生しています。もちろん現地住民にも大きな健康障害を発生しています。これらをまとめると
• 先天異常児の多発
眼がない、指が不足、内臓が体外に露出、内臓
の機能不全、水頭症など
• 住民(児童)の発病白血病、骨ガン、悪性リン
パ腫、腎臓ガンなど
• 住民(成人)の発がん 肺がんなど
• 従軍兵士の発病
ガン、
家族への影響の拡散もみられる。
これらの症状をみると部分的にはチェルノブイリでの重度の汚染地帯での状況と似ていることもありますが、先天異常児の多発、成人の肺がんをはじめ各種のガンが多いなど特徴的な状況もみられます。ただ統計的に処理できるほどの大量のデータが収集されておらず、もちろん被ばく線量なども明確にはわからない場合が多いと言えます。
4.劣化ウラン弾をめぐる世界の情勢
米国政府、英国政府はこれらの兵士・住民の被ばくによる被害を劣化ウラン弾によるものであると認めていません。これは劣化ウラン弾は通常兵器としては非常に優秀な兵器であるのでこれの使用を禁止されたくないという立場があります。加えてWHO, IAEA, ICRP、UNSCEAR、 UNなど国際的な放射線規制や防護の役割をになう組織が原発推進側の立場にたっていて放射線被ばくの健康影響をできるだけ認めない方向に運営しているという事実があります。
これに対して、帰還兵や爆撃された現地の住民など、深刻な被害を発生している市民団体による使用禁止運動が世界的にひろまりつつあります。国連の人権小委員会でも使用禁止の条約の提案がなされましたが米国等は放射線の国際機関で正式に健康影響や環境破壊の効果がみとめられていないことを理由に反対している。
その中で2010年の国連総会では日本を含む148か国の賛成、米英仏イスラエル4か国の反対、棄権30(ロシア、オーストラリア、カナダ、デンマーク、スエーデン、
スペイン、トルコ、ウクライナ、韓国、バルト3国その他)により「過去にDU兵
器を使用した国はその場所と量をできるだけ詳細に報告すること」を決議している。
また個別の使用禁止条約は成立していなくても次のような人道法の原則に違反しているという視点から使用禁止を迫るという闘いもある。
1.兵器使用の影響は戦場のみに限定され、地理的にその範囲を越えてはならない。
2.人体への影響は戦争中のみで、後々まで続くものであってはならない。
3.不必要なまでに非人道的であってはならない。
4.長期、広範囲に環境汚染を引き起こしてはならない。
5.まとめ
劣化ウラン弾は通常兵器とは言われるものの、後に兵士や住民に深刻な内部被ばくの影響を生じる。その意味では核の兵器の性格も持っている。原発の核廃物の有効利用ということを一つの契機として開発された意味で、「原発と戦争を結ぶ兵器である」と言える。
被ばくの特徴としてはアルファ線、ベータ線による被ばくとなること、ウランの微粒子(エアロゾル)の吸入による呼吸器を窓口とした内部被ばくという特徴がある。
影響の発生状況をみると先天性の臓器障害の発生が多く、またガンの発生も多い。これは微小粒子によるいわゆるホットパーティクル仮説が作用している可能性がある。
国際的には使用禁止への圧力も高まっているが、軍事的に利用したい諸国(米英仏イスラエル)が反対している。放射線の被ばく基準や防護を専門と国際的組織は十分に科学的な結論が出ていないとして、劣化ウラン弾の利用禁止への抵抗勢力に力を貸している。
子どもの低線量被曝 スイスで低線量被曝と小児ガンのリスク研究 大きな反響
(解説:里信邦子)に注目しましょう。
「福島第一原発事故以降、低線量被曝による小児ガンのリスクは欧州でも関心を呼んでいる。こうした中、スイス・ベルン大学が2月末に発表した研究は、低線量でも線量の増加と小児ガンのリスクは正比例だとし、「低線量の環境放射線は、すべての小児ガン、中でも白血病と脳腫瘍にかかるリスクを高める可能性がある」と結論した。毎時0.25マイクロシーベルト以下といった低線量被曝を扱った研究は今でも数少なく、同研究はスイスやドイツの主要新聞に大きく取り上げられ反響を呼んだ。」と紹介しています。
一般に小児は成人にくらべ放射線の被ばくによる感受性が高いことが知られていますが、0.25μSv/h以下というような低線量被曝において 最近のスイスの研究では積算線量が1ミリシーベルトあたり発がんリスクが4%増えるという数字を出しています。5ミリシーベルトなら20%。とても無視できる値ではありません。この部分に関する原論文は下記です。グラフはFig.2 を参照
白血病=leukemia、 リンパ腫=lymphoma
http://ehp.niehs.nih.gov/wp-content/uploads/123/6/ehp.1408548.alt.pdf
2015年7月2日付の毎日新聞その他の報道によれば低線量の放射線を長期間にわたって浴びることで、白血病のリスクがごくわずかだが上昇するとの疫学調査結果を、国際がん研究機関(本部フランス)などのチームが英医学誌ランセット・ヘマトロジーに発表した。
http://mainichi.jp/select/news/20150702k0000e040209000c.html
1ミリシーベルトの被ばくごとに相対リスクが1000分の3程度上昇するという内容。100ミリシーベルト以下の低線量でもリスクはなくならないとした。
2015年3月の記事です。
福島事故、隣県でも甲状腺検査を 医師団体示唆
http://www.47news.jp/CN/201503/CN2015030301002455.html
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20150304160832980
次の部分が注目されます。”核戦争防止国際医師会議(IPPNW、本部・米マサチューセッツ州)が3日、ドイツの首都ベルリンで記者会見し「子どもの甲状腺検査が福島県に限定されている」と懸念を表明、事故の影響の全体像把握には隣県での検査も必要との考えを示唆した。”
政府は10省庁連名による文書「放射線リスクに関する基礎的情報」(平成26年2月、5月刊行)で福島第一原発による事故で広範囲に放射線による汚染が発生したにもかかわらず、「健康への影響は小さい」として、帰還にむけてキャンペーンをはっています。
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20140603_basic_information_all.pdf
「核戦争に反対する医師の会」(反核医師の会)はこれに対して科学的に批判する冊子を発行しました
http://no-nukes.doc-net.or.jp/resource/1412housyasennrisuku.pdf
購読希望の方はpanw@doc-net.or.jpまで
事故直後の1巡目の検査では異常なしとされた子ども4人が、4月から始まった2巡目の検査で甲状腺がんの疑いと診断された。下記 東京新聞2014年12月24日朝刊 参照
国連特別報告者であるアナンド・グローバー氏は福島第1事故後の対応について日本政府および福島県当局に対して耳の痛くなる各種の指摘を行っている。報告書の仮訳は下記から入手できる。
http://hrn.or.jp/activity/130627%20Anand%20Grover%27s%20Report%20to%20the%20UNHRC%20japanese.pdf
48.では年間被ばく量20ミリシーベルト以下でも安全とは言えないことを指摘している。また
77.原発事故の影響を受けた人々の健康管理調査に関する勧告(p.34~35)の中では「健康管理調査は、年間1mSv以上の全ての地域に居住する人々に対し実施されるべきである。」と明確に述べている。
北海道がんセンター院長の西尾正道医師の講演会(2013年2月3日、福島市にて-「市民が学ぶ甲状腺検査の会」の主催)。今、世界的に実質的な被ばくの基準のもとになっているICRP(国際放射線防護委員会)の基準は、科学ではなく物語で-あると言う西尾医師。反骨のがん専門医のいろいろな問題指摘。2時間10分にわたり熱弁をふるう。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=B1txoH13F7o&list=PLED42CA93CC130108
http://nishiomasamiti.web.fc2.com/youseibunn.pdfに注目!
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター院長 西尾正道氏から福島第1原発の被災者に対する医療支援を抜本的に強化する要請書(2013年1月30日付)が出ています。チェルノブイリ事故の教訓をみると5年から20年先、そして第2世代第3世代にも影響が出る危険性があり、その時に国の支援が受けられないという事態を避ける必要があるという考え方から建議されているようです。
内部被ばく研究会から賛同署名の呼びかけが出ています。
甲状腺がんの子ども 新たに6人
「原発事故を受けて、福島県が事故当時18歳以下だった子どもを対象に行っている甲状腺検査で、新たに6人が甲状腺がんと診断され、甲状腺がんと診断された子どもは合わせて18人となりました。 福島県の検討委員会は「現状では原発事故の影響とは判断できない」としながらも新たに専門の部会を設けて、原因などの検証を進めていくことを決めました。」(以下全文)
(2013年8月21日 4時22分) NHK News Web
【声明】 福島県民健康管理調査における甲状腺がん発見の報道を受けて
2013年2月18日 全日本民主医療機関連合会 会長 藤末 衛
新たに2人甲状腺がん 県民健康管理調査 (福島民報2013/02/14)
平成23年度 甲状腺検査の結果概要(2012年3月末日現在)
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/koujyosen-ketuka2403.pdf
放射線による甲状腺への影響(総合的解説)
広島赤十字・原爆病院副院長・小児科部長 西 美和
http://www.pediatric-world.com/hiroshima/hoshasen_kojosen.pdf
深川市立病院 松崎医師の考察(意見書) 異常事態であることを指摘
チェルノブイリ除染で被曝、低線量でも白血病リスク 日本経済新聞=共同 (2012年11月8日)
★放射性セシウムによる心不全の起こるメカニズムの考察
http://sakuradorf.dtiblog.com/blog-entry-366.html
まだ原発推進派は認めていない領域。多少専門的ですが・・・医師としての検討例
★放射性セシウムによる心筋梗塞のメカニズム考察
http://sakuradorf.dtiblog.com/blog-entry-367.html
(同 上)
★ベラルーシの報告 低線量被曝を原因とする小児における心臓疾患と白内障
(ガリーナ・バンダジェフスカヤ博士の講演 2012年5月12日スイスのジュネーブにて)
短時間で正確な放射線被ばく線量の推定ができる新しい手法を開発 染色体異常から推定(平成24年5月21日 広島大学)
http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/koho_press/press/h2401-12/p_px3vqw.html