食品等の参考書


「見捨てられた初期被曝」(study2007著)は重要 これまでは0.1ベクレル/日以下のCs137摂取


岩波科学ライブラリー239 (1300円+税)。著者名はペンネームになっています。本来は「健康への影響」のコーナーで紹介すべき本です。想定外の大規模放射能汚染事故が発生した時、原発安全神話で進んできた日本政府はそのような事故に対応する体制も何もなく、混乱の中で基本的な対処としては安全基準のレベルを10倍に引き上げ、「ただちに健康に影響のでることはない」という宣伝を繰り返した。何の科学的根拠もなく「それでも安全」と宣伝することにより対応したわけです、その後もいろいろな政府機関がそれを追認するということで原発再稼働まで進んできたという実態を赤裸々に告発しています。

 

が、現時点で一番鮮烈な印象を残した部分が第5章の「神話のままの被ばく防護」、とりわけ食品安全基準の部分。ご存知のように現在の食品の規制基準は100ベクレル/kg. この基準をクリアーした食品、つまり10ベクレル/kgレベルの食品は堂々と「安全です」と売られている。しかし事故前の20年間くらいをみても(チェルノブイリの事故の時はやや上昇しているが)実際に日本人が摂取していた食品のベクレル数は一人につき1日当たりCs137で0.3 ベクレル以下。その他の核種を含めても0.1ベクレル以下だったと指摘されています。(p.94) 出典をたどってその根拠となる図を探してみると政府の外郭団体の運営する「食品と放射能」のサイトにありました。

 

つまり「大気圏内核実験などにより”放射能に汚染された環境”でも何とか今まで暮らしていた時代のおよそ1000倍の放射能を摂取しても大丈夫」という基準であるわけです。事故前でも大腸がん、乳がんをはじめ各種のがんの発生率が年々増大しているという大問題があるのに、とんでもない基準であることがわかるでしょう。

 

それではどうすれば良いのかについても示唆に富んだ図がでています。(p.89) 結局、農産物については土壌の放射能汚染を基準にするしかないわけですが、「原発事故前の土壌表面汚染全国平均(445ベクレル/m2)」にくらべて福島県を中心とする都県の土壌が放射性降下物によりその10倍から20倍以上汚染されたので青森県以北、愛知県から西(日本海側は新潟県から西)の産物を摂取すればよさそうという結論になっています。

  なお上記の経年変化の図は下記の操作で得ることができます。

 

まず http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food/ に飛ぶ。

 

「食品と放射能」のトップページが表示されます。

下部に「本ホームページは、原子力規制庁の委託により公益財団法人日本分析センターが運営・管理しています。」という注釈が示されています。

 

Cs-137の摂取量の経年変化の図を表示させるには

1.この画面で「日常食」 のアイコンをクリック

2.「核種の選択」でCs-137にチェックを入れる⇒次へ進む

3.「全国を選択」をポイントして「OK」をクリック

4.「経年変化データ」の枠の中で「検索結果を表示する」をクリック

これで表示されます。


西尾正道「放射線健康障害の真実」


国立病院機構北海道がんセンター院長の西尾正道氏がわかりやすさを主眼に健康障害の真実を解き明かす趣旨の本です。実際96頁という薄い本で字も大きく、図表も多く、非常にわかりやすくかかれています。もちろん内容は政府やICRP関係の学者がいうようなゆがめられた「楽観論」ではなく、何が危険なのか、どういう機構で人体に影響を与えるのか、一番知りたいところの医学的真実を述べています。

 「低線量被曝の影響は20年後に出ることもある。・・・甲状腺がんだけでなく心疾患や循環器系の障害にも注意する必要がある・・・」等の指摘は重要です。呼吸や食品からの内部被ばくをできるだけ避けていくことが必要となります。

 政府・原子力村の宣伝、刷り込みに負けないで基本的な批判の視点を科学的知識から強化していくのに役立つでしょう。


本体定価1000円 ISBN978-4-8451-1262-3 旬報社刊

2012年4月20日初版発行


「これから100年放射能と付き合うために」 菅谷 昭著 亜紀書房

「けっして、目をそらさない。私たち一人ひとりにできることは?」と帯にあるようにチェルノブイリの被災地で10年近く医療支援に携わった医師からの本音の警告。

 ISBN 978-4-7505-1204-4 定価 本体952円+税

食品や水に限らず、福島原発事故で汚染された地域に住むすべての人に生活上の疑問にQ&A方式でわかりやすく答えた本。


今日からできる!キッチンでできる!チェルノブイリからのアドバイス 

「自分と子どもを放射能から守るには」 ウラジミール・バベンコ著 ベルラド放射能安全研究所著

                         辰巳雅子訳 今中哲二監修

       ISBN978-4-418-11318-7  世界文化社 (本体800円+税)

非常に読みやすい本でクッキングブックの

感覚で料理や生活上の注意に関する実際

的な知識が得られます。


「母と子のための被ばく知識 原発事故から食品汚染まで」

     崎山比早子+高木学校 著

ISBN978-4-88385-139-3  新水社 (本体1300円+税)

こちらの本は福島をふくめ原発事故や放射線の影響

について広く深く解説しています。実際的な知識を得

るには上の本と合わせて読むと良いでしょう。


食品の放射能汚染完全対策マニュアル 「0ベクレル」の食卓を目指すためのバイブル

    水口憲哉・明石昇二郎 著 宝島社 ISBN978-4-7966-9685-2 本体800円+税

日本のデータ。産地が放射能汚染地域であるかどうかを毎月の出荷比率から見積もり、安全度を推定するという方法をとっている。実際の汚染度合は考慮されていないのでいかにも間接的であるが、ある程度の目安にはなるという本。扱っている農産物・海産物はそれぞれ100品目あり、広い。